plot セルフライナーノーツ

 この曲を作ったのはもう2年半も前のことになると思います。当時17歳高校3年生の春、受験勉強に追われ始めたころでした。いつも勉強している図書館の自習室でふとplotのコードとメロディが浮かんで、これは勉強している場合じゃないと思って急いで家に帰りスマホのボイスメモに録音したのを覚えています。あの時の行動は正解だった!偉いぞ俺!

 

 当時をふと回帰してみると、僕も17歳なりに色々悩みながら生きていたんだなと思います。元々は地方の大学を受けてそこに進学しようと思ったり、でも自分は高校卒業したらちゃんとバンドをやりたいからそのために関東に残ろうかなとも思ったり、毎日10時間くらい勉強してるけどこれに果たして意味はあるのかと思ったり、そもそも自分の進路はそう簡単に決まるのかなとも思ったり。その10代特有のもやもやとした気持ちが歌詞にどことなく表れてるんだなあと今聴いても思います。今の自分には出せないし、無理にその時のことを思い出すのも違う。そういう意味でこの曲はもう今の自分の考えとは少し違うけど、ライブではやり続けたい。曲と一緒に上手く年を取っていきたいなあと最近より強く感じます。

 

 この曲の解釈、正直聞いてくださる方々一人一人で違ってよい、むしろ楽曲なんてそんなものだと思っています。アーティストが“A”と歌ってリスナーが“A”と感じることは至極簡単なことだけど、僕は“A”のうちの一画目しか歌いたくない。それをリスナーには“A”とか“B”とか“一”とか感じ取ってほしい。創作者のエゴかもしれませんがそれが理想です。

 しかし、この場ではせっかくだから自分がどんなテーマで「plot」を書いたのか伝えたいなと思っています。先ほども述べた通り、元々地方に行く可能性もあったのも関係して、“故郷を離れて独り立ちする青年”をテーマにしています。もっと具体性を増すのであれば、その移動中の列車。サビの歌詞はまさにその情景です。“残る街の香り 急ぐ、思い同化しないように もう遠く見てるからさ心配しないでよ”―街を出発したばかりの列車の車窓からはまだ故郷があって、早く移動して忘れないと自分の気持ちが故郷に同化してしまってもっと辛くなってしまう。“故郷の回帰”、“故郷への未練”、“新しい地への不安”を落とし込みました。ぜひこの曲はそうやって自立しかけながらも色々と悩んでいる後輩たちに聞いてほしい。俺もまだまだ未熟だけど、完全な大人になれたときに誰かを励ますために歌いたい。その時が来るまでバンドを続けていたいです。

 

 ちなみに、plotをUrban lifeに収録することになり、拍子が変わるセクションを追加しました(もともとはなかった)。歌詞で言うと“幻想が層になる 夕景は旅に出る”のところです。この曲を弾き語りからバンドアレンジに起こしたときにあまりにも構成が単調だなと感じて挟み込みました。いい味になってると思います。

 

 つらつらと説明をしましたが、最後にもう一度。曲の解釈は聞く人一人一人が違って良い、ここに書いてあることが必ずしも全てじゃないです。色んな情景を浮かべながらこれからもこの曲を愛していただきたい。作曲者にとってそれほどまでの幸福はないです。

 

(2021年10月作成、原文ママ