言いたいことしかなかった セルフライナーノーツ

 僕が愛するバンドの一つに“ベランダ”というバンドがいるのですが、ここからの曲解説を読む前に是非ベランダの「その目で」という曲を聞いてほしいです。冒頭の素晴らしいイントロからの歌い出し、どう聞こえましたか?僕は“言いたいことしかなかった”と聞こえ、初めて聞いたときに衝撃を受けました。言いたいことはない、言えない、といった表現はよく見られますが、逆に“言いたいことしかなかった”と表現するアーティストがいるのか、と。サブスクには歌詞が登録されていなかったのですがそう歌っているものだと思っていました。しかし、先日CDを購入し、歌詞カードを開いてみたら“聞いたことしかなかった”が正解だったと…。この瞬間、僕はこの言語表現を自分のものとし、「言いたいことしかなかった」という楽曲を作ることを決めました…。

 

 僕個人の話になってしまうのですが、実は8月半ばから9月頭までに例の流行り病にかかっていまして、症状も軽くなく割と辛い夏を送っていました。その中で作った曲がこの曲です。ホテル療養中にベッドで寝ころびながら、終わらないこの情勢と会いたい人に会えないもどかしさとを憂いて歌詞を書きました。10月現在は2か月前の情勢が嘘のようになっていますが、当時の自分は割と色々なことに絶望し、諦めの気持ちを持っていたように思えます。まだこの先もどうなっていくかは分からないけど、この時の最底辺の気持ちを忘れずにいたいなと思います。“全長19kmのトンネル”はまんまCOVID-19のこと。

 

 コード進行がちょっと良くわからないです、作曲者の癖に。多分キーとかあんまり意識してないし、音楽理論的にもよくある進行ではないと思います。イントロは、ルート音を半音ずつ上がるくだりを3回繰り返しててよく聞くと気持ち悪い。ボーカルは浮遊感を出したかったので、同じ音程とオクターブ下で声を重ねたりしました。サビはとにかくリフレイン、聞いている人の頭に残るように。言いたいことしかなかった~♪

 

(2021年10月作成、原文ママ