暮れる セルフライナーノーツ

 このEPはそもそも4曲収録の予定でしたが、僕が、「せっかくフィジカルも作るならどうしてもボーナストラックを作りたい!」というわがままをメンバーに押し通して5曲録ることを決めました。が、自分で言ったはいいものの、録るための曲はありませんでした。自分勝手、勢い、プレバトに“計画性部門”があったら才能ナシ。レコーディングまで一週間、焦る時間ももったいなく5曲目を作り始めました。そしてできた曲が「暮れる」です。本来はフィジカル限定収録のボーナストラックになる予定でしたが、曲の出来とメンバーの反応が想像以上によかったため、通常の収録にし、「むかしむかし」をボーナストラックにしました。

 

 ギターのアルペジオフレーズから着想を得てこの曲を作り始めました。いつか使いたいなあと思っていたフレーズ(ほぼ手癖)だったのでいい形で昇華させることができて満足です。ギターの歪みの若干のつぶれ具合とスリーピースバンド感、“もういいよ どうでもいいよ”のところをボーカルとベースラインで同じメロをなぞる、このあたりが意識したポイント。

 

 ドラムとベースも自分が作ったデモの段階からはかなり飛躍していて、良い味を出しているなあと感じます。本当なら、スタジオに何時間もこもってメンバーとあれやこれや言いながら曲作りを進めてみたいものですが、スケジュールとお金にそんな余裕はないため基本的にはそれができません。そんな短いスタジオの中で、メンバーがかっこいいアレンジをすっと提供してくれて曲自体が成長する瞬間、この瞬間こそがバンドの醍醐味であると思います。宅録や打ち込みが容易になった時代の中で、コストと時間をかけてわざわざバンドをやっているのは、定期的にこういう瞬間が訪れるからです。

 

 歌詞のテーマは“諦念”。1曲目と同様にコロナもあり、かつRecまでの期限もあり、あまり良い精神状態で作られた曲ではなかったです。明るくない歌詞にしようとは思っていました。

“生きづらさを吐露するだけの阿呆に前を行かれたくはないな”、矢﨑お気に入りです。多くは語らんですが、“もうこんな世界なんて。“と言って共感を得るのなんて簡単なのです。大事なのはそこじゃない。

 

(2021年10月作成、原文ママ